QLC SSDが登場して、大容量でも急激に安くなったSSD。1TBで1万円前後と大変お手頃、パソコンの内蔵用として使用する人も多いと思いますが、ハードディスクの代わりに外付けSSDとして使うのも便利です。軽さを生かしノートパソコンと共に携帯するといった事も可能です。
今回は、ハードディスクに代わって、外付けドライブの世界でもSSD化が進む中、その使用感と選び方を確かめてみます。
外付けSSDはポータブルSSDとも呼ばれ、買ってきてそのまま使用できる出来合いの製品と、SSDとSSDケースを別々に購入し自分で作るタイプの外付けSSDに分かれます。
どちらにも、それぞれメリットがあります。
出来合いの製品は、デザインにこだわっていたり、自分で作るよりも軽量です。また、ユーティリティソフトウェアも付いていることがあります。
自分で作る外付けSSDは、余ったSSDや気に入った性能のSSDを選ぶ自由度があり、低価格のSSDを使用すると費用を抑えることも可能です。作るのは簡単で、SSDとSSDケースを買ってきて組み込むだけです。
今回はひとつ外付けSSDを作ってみました。低価格を重視してサムスン製の1TBのSSD(860 QVO)と、ケースはSSDとセットで購入し300円程度に抑えています。完成品の重さは約90グラム(SSD+ケース)で、3.5型のHDDと比べると、かなり軽くて扱い易くなりました。
「Samsung 860 QVO 1TB」とSSDケース「玄人志向 GW2.50R-U3」を使用。
SSDを取り付ける
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フタを閉める
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完成
外付けのSSDを選ぶときのポイントは、性能、保証期間、インターフェイス、総書き込み容量の4項目をよく調べます。
性能は、シーケンシャル、ランダムともにより高速なものを選びます。ネットで様々なベンチマークが載っているので、それを確認します。
基本性能はベンチマークソフト「Crystal DiskMark」で確認。
Samsung 860 QVO 1TBの性能。
また、大容量ファイル(数ギガ~数十ギガ)の書き込み速度も見ておきましょう。
SSDには、2次キャッシュが搭載されており、キャッシュ容量を超えるファイルを書き込む場合に、速度が極端に遅くなります。動画やゲームクライアント、バーチャルマシンといったギガ単位の巨大なファイルをコピーする人は、ネットでベンチマーク結果を確認します。
下図の例では、48GBのファイルの書き込みを行い、機種の違いで60秒の差がついています。キャッシュが足りないとこのような事が起きます。
860 QVO 1TBの2次キャッシュは最大42GBで、入りきらない部分の書込みは遅くなる。
次に、SSDの保証期間を確認します。これは特に重要でSSDの信頼性の指標になります。3年~5年の保証期間が標準ですが、中には1年しか保証していない製品もあるので、保証期間が短いものは避けるのが賢明です。
パソコンにポータブルSSDを接続するには、USBを使用します。SSDの製品説明には、「USB 3.1対応」などの表記がされています。パソコンも同じ規格のUSBに対応していなければ、十分に速度を出すことができません。
メーカー公称値で、シーケンシャルリードが500MB/sクラスの製品なら、USB 3.0 以上が必要で、USB 2.0などの古いコネクタしかないパソコンでは、最高速度がUSBの速度に制限されます。公称値が1000MB/sの製品なら、USB 3.1(Gen2)、USB3.2の10Gbit/s以上のコネクタがパソコンに搭載されている必要があります。
規格 | 転送速度 |
USB 2.0 | 480Mbit/s |
USB 3.0 | 5Gbit/s |
USB 3.1(Gen1) | 5Gbit/s |
USB 3.1(Gen2) | 10Gbit/s |
USB 3.2(Gen1) | 5または10Gbit/s |
USB 3.2(Gen2) | 10または20Gbit/s |
ThunderBolt 2 | 20Gbit/s |
ThunderBolt 3 | 40Gbit/s |
転送速度を8で割るとメガバイト秒(MB/s)やギガバイト秒(GB/s)に変換できます。
SSDのフラッシュメモリは、何度もデータの消去と書き込みを繰り返すと劣化します。そのため、SSDには寿命があり、トータルで何テラバイト書き込めるかを総書き込み容量(TBW)で示しています。例えば、256GBのSSDで100TBWなら、トータル100テラバイトの書き換えが可能です。
通常の、文書、写真、動画の保存用途なら、TBWを使い切ることはほぼ無いのですが、システムドライブのフルバックアップを定期的に取ったり、動画編集系で大容量動画ファイルの書き込みと消去を頻繁に行うなら、使い切ることもあります。稀かもしれませんが、このような使い方をする人は、スペック表のTBWを確認しておきましょう。
外付けSSDを手に入れるには、製品版を購入するか、SSDとSSDケースを購入して自分で組み立てる方法があることを説明しました。自分で外付けSSDを作る場合は、SSDの特徴を押さえて選びます。
SSDには、1セルに何ビットのデータを書き込めるのか、3ビットならTLC、4ビットならQLCと表します。QLC SSDはTLC SSDよりも容量が大きく低価格になります。しかし、書き込み速度や保証年数などでTLCに及びません。価格と性能(信頼性)のトレードオフになることを覚えておきましょう。
外付けSSD | 価格 | 特徴 |
外付けSSD(製品型) | 中間(☆☆)~高い(☆) | 製品によってパスワード設定ソフト等が付属する場合あり。自分で作るより軽量。 |
QLC SSD + ケース | 安い(☆☆☆) | 大容量で安いが信頼性はTLC SSDより下がる。大容量ファイルのコピー速度に注意。 |
TLC SSD + ケース | 中間(☆☆) | 一般的なSSD。QLC SSDより高価。 |
MLC SSD + ケース | 高い(☆) | TLC SSDより高価。 |
NVMe SSD + ケース | 高い(☆) | 高速SSD。高速性を活かすためには、10Gbit/s以上に対応したUSBなど必要。 |
外付けSSDの容量はHDDには及ばないものの、高速な読み書きと、携帯性で優れています。用途はデータ保存がメインですが、筆者はテレビの録画用に、外付けSSDを使用しています。電源アダプタが無くて気に入っています。
今後は、PLC(5ビット)SSDの登場と、大容量化に伴い、外付けSSDはもっと身近なものになると思います。