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オーバークロックCPUの「当たりはずれ」について(i7-7700K,i5-7600K)

オーバークロックに使用するCore i7-7700Kには、個体差があると言われています。クロックの到達点が違っていたり、同じクロックに上げるにも消費電力が違うといった具合です。なぜこのようなことが起こるのか、少しばかり解説しようと思います。

個体差ができるときの様子

CPUなどのチップは、一枚のシリコンウエハーから複数個作られます。シリコンウエハー上に、CPU回路パターンを、いくつも並べて作り出しますが、すべて成功するわけではなく、使い物にならないチップもできあがります。これを示したのが下の写真で、電気的な検査をして、使い物にならないチップには、黒いインクが付けられています。全体を見ると、失敗したものが結構あることがわかります。

どこのメーカーのものかわかりませんが、シリコンウエハーからどんな具合でチップが出来上がってくるのか、よくわかると思います。

さらに、成功してうまくできたチップごとの、性質も違っています。動作は問題ないものの、ゲート長の違いなどのばらつきがあるために、電気的な性質に違いが生まれます。あるチップは高クロックで動作するが、あるチップでは高クロックで不安定になるものがあり、また、同じクロックで動作をさせたときに、消費電力や電圧が微妙に違うなど、個々のチップに差が生まれます。

個体差を生む原因は、チップをシリコン上に形成するため、数多くの工程を経るなかで生じるようです。詳細は専門書に譲ります(難しいので)。シリコンウエハー上のチップ間、別々のウエハー上のチップ間、ロット間で、チップの性質は違ってきます。

この個体差がオーバークロック用CPUの限界を決めます。オーバークロックできるCore i7-6700Kや7700Kを買ってきて、「当った」、「はずれた」というのは、個体差のあるチップのなかで、運良くも特性の優れたものが手に入ったり、入らなかったりすることなのです。オーバークロックに適したチップ(ダイ)は、他の個体よりも低い電圧で動作して、消費電力が低いため発熱を抑えられ、高クロックで動作するチップです。

ここまでくると、Pentium や Core i7-7700、Core i5-7400など、OCできないCPUの場合でも、電圧や消費電力が個体ごとに違うということなのです。ここでも「当たり」CPUは、大きなメリットをもたらしてくれます。

オーバークロックに話を戻しますが、OCには2種類あります。いつも使うアプリケーションを高速に動作させるため、定格クロックをアップさせて常用する「常用OC」と、クロックを限界まで引き上げて記録を狙うOCがあります。どちらのOCのときでも、この「当たりはずれ」は、消費電力と発熱の差として現れるので、決定的な要素になります。そして、CPUを買うときには、「当たり」を引きたいものです。

[知識]歩留(ぶど)まりが良い悪いとは?

一枚のシリコンウエハーからは、なるべく多くのチップが取れる方が、コスト面から優れています。 「歩留(ぶど)まりが良い」とは、一枚のシリコンウエハーから、チップが多く取れること、「歩留まりが悪い」とは反対に、あまり多くのチップが取れず、製造コストが跳ね上がってしまうことを指します。製造プロセスの微細化は歩留まりを悪くし、14nmの歩留まりは、22nmの時よりも悪くなっています。
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